先日、とある日本食レストランを訪れた。
このレストランは私が以前、常連だったレストラン。
当時、ロンドンの中心部に店を構えていたこのレストランだが、経営不振で私の家の近所に引っ越してきたのだ。
昔からあるレストランなので名前は知られていたと思うが、引っ越してきた当初はお客さんが誰もいない日も多く、顔なじみになるにつれてフロアを担当していた奥さんとよく話し込んだりした。
奥さんは肝っ玉母さんとは全く逆のタイプで、いつもお辞儀をしてるような謙虚な方。
常連だからと言ってズケズケと踏み込んでくるのではなく、私とも少しずつ距離を縮めて、遂には話し込むほどになったのだ。
当時の私はパートナーもいなくて一人暮らしだったし、海外に女一人で住んでいて辛いことだってたくさんあった。
そんな中、奥さんとの何気ない会話に救われたこともあった。
別に深刻な悩み相談をするわけじゃない。
たわいもない世間話だったり、ちょっとしたお得情報だったり、なんてことない会話だけれど、異国で一人、生きている人間にとってはそれが救いになったりもするのだ。
少し年の離れた旦那さんがキッチンを担当していて、お店には当時小学生だった息子さんも来て宿題をしたりしていた。
この息子さんが中学生になると、母親である奥さんに対してものすごい態度で接しているのを時々見かけた。
奥さんは気まずそうに
「遅くにできた子供なんで…こんなになっちゃって…」
と言った。
確かに普段キッチンにいてあまり見ることはない旦那さんは、その当時すでに60を超えていた。
息子さんは日本人学校ではなく現地の学校に通っていて、英語はすでに両親より達者とのことだった。
だから日本人の両親を見下すような態度をとるようになってしまったのだろうか?
そんなレストランの近くに私が住んでいたのは、約10年ほど前まで。
週に1度は訪ねていたこのレストランだが、引っ越してからはさすがに足が遠のいた。
それでも機会を見つけては訪れるようにしていた。
私が引っ越した後も、数年は奥さんが接客していた。
さらに数年たつと、息子さんがお店を手伝うようになっていた。
しかしもう5年くらいになるだろうか、奥さんを店で見かけることはなくなった。
私は息子さんのことをよく覚えてはいるが、宿題をしていた彼は当時の客の顔など見ていなかったはず。
訪ねても、私が以前の常連だったと知る人はもういない。
私の足も更に遠のいた。
実は前回訪れたのは3~4年ほど前だった。
その時は10人弱ほどの日本人サラリーマンの団体が宴会をしていた。
奥さんはおらず、息子さんがフロアにいた。
私たちはだいぶ空腹だったので、席に着く前に
「時間掛かりますか?」
と尋ねると、大丈夫だとの答え。
着席して注文したが…20分…30分…何1つ出てこない。
飲み物も前菜も、何も出てこない。
45分経って友人も私も耐えられなくなり、お店を去った。
私が連れて行った手前、友達にも申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
それを最後に、私はこのレストランを訪ねていなかった。
しかし今回、訪れることになったのはパートナーの希望。
うちのパートナー、日本で美味しいラーメンを食べて以降、ちょっぴりラーメンにハマっている。
ロンドンでもラーメンは人気で、一風堂をはじめ多くのラーメン屋が存在する。
ただしヨーロッパで人気なのは豚骨なので、ほとんどが豚骨ラーメン屋さん。
ロンドンで豚骨ラーメンを食べたときにはあまり反応がなかったパートナーだが、日本でいろんなラーメンを食べて、すっかり味噌ラーメンにハマってしまったらしい。
で、このレストラン。
ロンドンでラーメンブームが起こる前からラーメンの提供はしていた。
醤油ラーメン、味噌ラーメン、ネギラーメンなど色々な種類があった。
常連の時にどのラーメンがおススメか奥さんに聞いたところ、
「うちの(旦那)が気合を入れて作ったのは味噌なんです。」
と言っていた。
パートナーに
「あのレストラン、行ってみようか?」
と言われるまですっかり忘れていたけれど、確かにあのレストランには味噌ラーメンがある。
うーん。
でも最後に行ったときのことが頭をよぎる。
しかしパートナーに
「その時は宴会があったから提供が遅かったのかも。平日の夜なら大丈夫じゃない?」
と説得され、再度訪れてみることにした。
ど平日の夜7時前だったが、すでに何組か入っていた。
あ~、あの頃に比べて、お客さんが入るようになったんだなぁ…なんて懐かしみつつも、前回のことが頭をよぎる。
客がいる=待たされる?
いやいや、埋まっているのは半分以下、大きなグループはいないし、すでに食べている人もいる。
うん、今回は大丈夫なはず。
フロアには奥さんも息子さんも見当たらない。
パートナーが入口に立っていた日本人っぽい中年のウエイトレスに人数を告げると、ウェイトレスは何も言わず去った。
私たちが入口に立ち尽くしていると、ウェイトレスはメニューをテーブルの上に投げた。
どうやらそこに座れということらしい。
しばらくすると日本人っぽい若い男性がオーダーを取りに来た。
日本語が話せるものの、ちょっとした単語がわからない様子。
ピンときた。
もしかしたら息子さんの同級生かな?
ここの息子さんみたいにロンドンで生まれ育ったのだとしたら、日本人だったら知ってるはずの単語を知らなくても不思議はない。
日本語で質問しても英語で返してくるし、日本語よりも英語の方が楽な様子。
このウェイターさんに悪いところはなかったけれど、入口にいた中年ウェイトレスはひどかった。
運ばれてきた湯飲みの飲み口が3か所欠けていた。
いや、1か所だったらそこを避けて飲んだかもしれないけど、さすがに3か所は避けられない。
これ、口、切っちゃうじゃん?
通りかかった中年ウェイトレスを呼び止めて、交換をお願いしようと
「すみません、この湯飲みなんですけど欠け…」
私が言い終わる前に中年ウェイトレスがバッと湯飲みを掴んで去った。
え?え?え??
私の言いたいこと、わかったのかな…?
この人、もしかして日本人じゃないのかな…?
ただただ、はてなマークが頭の中をぐるぐる。
戻ってきた中年ウェイトレスは、何も言わずに新たな湯飲みをバンッと置いて去っていった。
そんな置き方するから欠けちゃうんじゃないの?と思ったりして。
新たに持ってきた湯飲みは欠けこそなかったものの、茶渋だらけだった。
正直、湯飲みが茶渋だらけなんて怠惰以外の何物でもないと思った。
茶渋なんて台所用漂白剤で一瞬で綺麗になる。
レストランでそれをしないなんて、怠惰でしかないでしょ。
しかも欠けてない湯飲みを持ってきたってことは、私が言ったことを理解していたということ。
飲み口が3か所も欠けた湯飲みを出して、謝罪の一言もないのは驚きだ。
そして食事を待っていると、見慣れた顔が入ってきた。
そのレストランの近所にある、別の日本食レストランのオーナー夫妻だった。
かつてそこに住んでいた私は、そのレストランもよく利用していた。
そのレストランはここのレストランとは逆で、息子さんには顔を覚えられていたが夫婦は私のことを知っているか、微妙なところだった。
すると驚いたことに、あの中年ウェイトレスが!!!!
日本語で夫婦に挨拶してる!!!!💢💢💢
えええええーーーーーーー!!??
この人、やっぱり日本人だったの!?!?!?!?
それなのに笑顔一つなく、一言も発さず、メニュー投げたり湯飲みをドン置きするあの態度??
チャイナタウンなら日常茶飯事、でも日本食レストランでこれは驚くって…!!!!
マジ、せめて日本人以外であれよ!!
<その②へ続く>


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